【連載:多重人格彼女】第11話「記憶がない」
アゲハは同居している従兄弟に連絡せず一夜を明かしていたので、きっと帰ったらこっぴどく怒られたりするんだろうなと思って心配になりメールをした。
数時間後、アゲハから返信があった。
「たぶん怒られたと思います。少しそんな感覚は残っていて身体がダルいです。あの、今日少し会えませんか?」
意味不明だった。
たぶん?感覚は残ってる?
さっぱりわからない。
この人謎過ぎる。
兎にも角にも、謎は解きたい。
僕はアゲハに会うことにした。
アゲハが従兄弟と住んでいるのは登戸駅、僕は武蔵小杉駅だったので結構近くに住んでいることは昨日からの会話で知っていた。
誘ったのは私だからと言って、アゲハが武蔵小杉駅までくることになった。
待ち合わせの時間、アゲハはやってきた。
「今朝ぶりですね」
「だね」
そう言って二人は笑った。
ほんと笑顔が可愛い。
惚れてまうやろ、というヤツだな。
「で、どうしたの?」
「メールでは説明しづらくて直接説明しようかなと思って来ました。」
「そうなんだ、わざわざありがとう。確かにあのメールの文面ではよくわからない部分があったかも。」
何を説明してくれるというのだろうか。まあ謎が解ければ何でもいいけど。
続けてアゲハが話はじめた。
「あの、私、今朝家への帰り道からさっきメールをいただく直前までの記憶がないんです。実は昨日も少しの時間でしたけど記憶がなくて...」
(続く)