【連載:多重人格彼女】第8話「横になれるところ」
「横になれるところに行きましょうか」
いつのまにか気を失ってしまっていた僕のことを心配してか、真意は掴めなかったがアゲハは僕に問いかけるでもなく、意志を感じる言い方でそんなことを言ってきた。
アゲハはその後、店員さんにお会計をお願いし会計を済ませ、席へ戻ってきた。
「行きましょう」
行きましょうって言っても...とは思ったけれど頭がついていかなかった。
ただ導かれるままに僕は3軒目を後にし、アゲハの行く方向にゆっくり付いて行くしかなかった。
僕らが到着したのはコマ劇場の裏にあるラブホだった。
これで横になれると安心した。たぶん少し横になれば今よりは回復するはずだし。
僕は宿泊代金を支払い、アゲハとラブホの一室に入っていった。
部屋に入ったらすることはひとつしかない。
そう、横になることだ。
そう断言できるくらい限界だった。
僕はすぐに横になった。
次に僕が意識を回復したのは2時間後の午前3時頃だったと思う。
僕が気づいたときアゲハは寝ずに起きていた。
アゲハは髪が濡れていてバスローブ姿だった。
(続く)