【連載:多重人格彼女】第7話「気を失っていた」
3軒目で最初の飲み物が届いたとき、僕は気を失っていた。いつのまにか寝てしまっていたのだ。
マシロとアゲハと3人で待ち合わせた日は寝不足だったから早く帰るつもりだった。
まだお酒を飲み慣れておらず、自分の許容量も把握しきれていなかった。しかも、寝不足のときは自分が思っているよりも酔いが回るのが早い傾向があるなと感じはじめた時期ではあった。
「ジュンさん?ジュンさん?」
その声が聞こえて、僕はようやく起きた。
「あ、すみません...思った以上に酔いが回ってしまったようです...」
アゲハが心配な様子で聞いてきた。
「大丈夫ですか...?」
全然大丈夫じゃないし、すぐにでも横になりたいと思っていたので、僕はこう返事をした。
「ほんとすみません、ちょっとダメかもしれません...正直、横になりたいです...」
アゲハは嫌な顔ひとつせず、ただ申し訳なさそうに言った。
「私が無理矢理お誘いしたのが悪かったですね、本当に申し訳ありません。」
いやいや、アゲハのせいではないですよ、みたいなことを答えた後、アゲハから意外な一言が発せられた。
「横になれるところに行きましょうか」
(続く)