Junの徒然

思いのままに綴るブログ

【連載:多重人格彼女】第2話「アゲハという友人」

友人マシロがドタキャンして、初対面のふたりが新宿で待ち合わせるという変わった状況の中で僕とアゲハは出会った。

 

アゲハと会えたものの、初対面のふたりで何を楽しめというのだろう。マシロがいなくて本当に困った。

 

とりあえず腰を落ち着けないと、と思い飲み屋に行って夕飯を食べることにした。

最初の飲み物を選び、注文するところまではお互いに何を話すわけでもなく、注文に集中した。


注文してから飲み物が運ばれてくるまでの短い時間で何を話したらいいのか、僕には思いつかなかった。とりあえず共通項はマシロしかない。

 

「マシロ、急にどうしたんでしょうね」
「ね、どうしたんでしょうね。聞いてないのでわかりません。」

 

沈黙が流れる。

 

「そう言えば、マシロと同じ看護大学なんでしたっけ?」
「はい。でも今は休学してます。」
「そうなんですね、何か他にやりたいことでもあるんですか?」
「いえ、特にそういうわけではないんですけど」

 

再びの沈黙

 

「看護系って病んでる方多いって聞きますが」
「多いですよ、マシロや私を含めて」
「あ、そうなんですね(アゲハさんも何かしらお持ちなのね)」

 

そんな会話をしているとき、アゲハの携帯に着信があった。アゲハは電話に出ようとしない。

 

「お気遣いなく。出てくださいね。」
「あ、ありがとうございます。じゃあ出ますね。」

 

アゲハは携帯を耳に当て、話し始めた。
敬語で会話をしている。なのに内容が不自然だった。

 

「今、友達と新宿にいます。まだ会ったばかりなのでしばらくいると思います。はい、すみません、はい、気をつけます。」

 

そんな感じの会話だった。

 

親?友人?先輩?


どれもこれも該当する人間関係が存在しないように思えた。

 

友達と一緒にいることを言わなければならず、謝り、気をつけるとも言っていた。しかも敬語だ。どこかの物凄く家柄の良いお嬢様なのだろうか。

 

そんなことを考えていたら気になって仕方なくなってしまった。
(続く)