【連載】第3話「再び現れたロングスカート」
民家の玄関ドアの前に座り込んでしまった酔っ払ったロングスカートの女性。心配になって声をかけるも想定どおりの警戒心こもった強い口調での返答。一度は居なくなったその女性が再び目の前に現れた。
もうすぐ自宅という場所でその女性はフラつきながら、もう歩くのが限界と見て取れるくらいな状態でゆっくり壁に手をつきながら歩いていた。
この状況には本当に困った。
自宅に入るには女性をまた追い抜かなければならない。確実に気づかれる。
跡をつけてきたのではないかと疑われるのも心外だったので、少しの間その女性が自宅を通り過ぎるまで遠目でかなりゆっくり歩きながら待つことにした。
しかし、女性は一向に進む気配を見せない。
女性の自宅はこの近くではないのだろうか。
いったいどこへ向かっているのだろうか。
僕も相当飲んでいたし早く家に帰って寝たい状況だったので、もうどう思われてもいいやと開き直り、気づかれてしまうのを承知で自宅の入り口に向かった。
女性に近づいていく。
ついに女性と隣合う位置関係まできた。
一気にその女性を通り過ぎたところで振り返ってしまった。目が合ってしまった。
気まずい。
非常に気まずい。
絶対、跡をつけてきたと思われた。
なんか嫌だ。
やっぱりそう思われるのは心外だ。
そんなことを瞬間的に感じた次の瞬間、僕はその女性に再び話しかけていた。
「あの、大丈夫ですか?自宅はこのあたりですか?」
彼女は答えない。
絶対、警戒心MAXだ。
「あ、えっと、僕の自宅あそこなんです(汗)」
それを聞いた彼女の表情から強張りが少し緩んだ気がした。
「どこに行こうとしてるんですか?駅とは反対方向だし、ふらふら歩いてたら危ないですよ」
彼女はようやく答えてくれた。
「知り合いの人の家に行こうと思ったんですけど、わからなくなってしまって」
それでふらふらしていたのか。
連絡したのだろうか。
「その知り合いとは連絡つかないんですか?」
彼女は苦笑いしながら
「連絡してるんですが返事がなくて」
そうですか、それは困りましたね、朝4時だもんね、寝ちゃったのかもね、などと言葉を発しつつ、もう歩けそうにも見えないし今にも倒れてしまいそうだし僕も家に帰りたいし酔っ払ってるし眠たいし、どうしたらいいかと冷静に考えることもなく、僕は次の言葉を発していた。
「あの、ウチきます?」
(続く)